2000年以上の歴史を持つ、鹿島神宮のお膝元で、自家製の麦芽からビールづくりを続ける、[パラダイス・ビア・ファクトリー]の唐澤秀(からさわしゅう)さん。日本はもちろん世界を探してもほとんどないという”農家さんがつくるビール”を生み出しました。誰も挑戦していない未知なるものを恐れず、自ら信じた道へ突き進む唐澤さん。この原動力には『自然栽培』がありました。
※以下、薬や除草剤だけでなく、有機の肥料や堆肥も与えない栽培法のことを自然栽培と表記しています。
※以下、薬や除草剤だけでなく、有機の肥料や堆肥も与えない栽培法のことを自然栽培と表記しています。
「まるで雷に打たれたかのようだった」。衝撃を受けた自然栽培との出合い。
「いくらおいしいといっても、おいしさにも限度があるでしょう。と、斜に構えていたんですが、自然栽培で育った小松菜を食べたときにはあまりのおいしさに驚いたんです。なんじゃこれってかんじでしたよ。自分の想像をはるかに超えていて、食べた瞬間はまるで雷に打たれたかのようでした」。
大学卒業後勤めていた農業法人での仕事にて、自然栽培との、運命的ともいえる出合いを果たした唐澤さん。その後は「最高においしいもの」を目指して独立し、自らの手で野菜をつくる挑戦をはじめます。
自然栽培とは、農薬や除草剤だけでなく、有機の肥料や堆肥も与えない栽培法。手間暇がかかり効率とは無縁のため、この方法を採用する農家さんは多くありません。でも唐澤さんは「最高のものを知っちゃったんだから、これに挑戦してみるしかない」という強い気持ちで、麦や大豆をはじめとした作物を生産しています。
自然栽培とは、農薬や除草剤だけでなく、有機の肥料や堆肥も与えない栽培法。手間暇がかかり効率とは無縁のため、この方法を採用する農家さんは多くありません。でも唐澤さんは「最高のものを知っちゃったんだから、これに挑戦してみるしかない」という強い気持ちで、麦や大豆をはじめとした作物を生産しています。
根気強く耕作放棄地を開墾。ビールづくりで体にも地球にも良い場所を作る。
縁あって茨城県・鹿嶋に畑を借り、『鹿嶋パラダイス』を結成した唐澤さん。夢を抱いて自然栽培を始めますが、ある壁にぶち当たります。それは主な作物である麦や大豆の市場での価値の低さ。同じくらい手間がかかるにも関わらず、麦は米の半分ほどの値段にしかなりません。
大豆はさらにその半値。「いくらおいしいものを作っても、おいしさでは市場価値は上がらない。熱意があっても、赤字で暮らしていけないなら続けられないし、次の世代に自信をもってすすめられないですよね」。
ただ、麦や大豆を育てることで土の中の菌のバランスがよくなり、自然栽培の畑は健康な状態に保たれるので、肥料やたい肥を与えなくてもよい土が出来上がります。麦の栽培は自然栽培の命といっても過言ではありません。そこで唐澤さんは、自ら育てた麦でクラフトビールを醸造する困難な道へ取り組むことに。
ただ、麦や大豆を育てることで土の中の菌のバランスがよくなり、自然栽培の畑は健康な状態に保たれるので、肥料やたい肥を与えなくてもよい土が出来上がります。麦の栽培は自然栽培の命といっても過言ではありません。そこで唐澤さんは、自ら育てた麦でクラフトビールを醸造する困難な道へ取り組むことに。
イチから生産して販売まで。一貫して行うことで生まれる誇り。
自信をもって育てた自慢の麦を、自らの手でビールへ。この理想の循環を実現するために4年間ビールづくりの修行を重ねた唐澤さんは、2016年に鹿嶋神社の参道にブルワリーを作ります。一度に仕込める量は、250リットルというとても小さな規模のマイクロブルワリー。
でも素材から一貫して向き合っているからこそ、唐澤さんが理想とする味をとことん追求することを可能にしています。
仕込み水は硬度が高く、ミネラルたっぷりの鹿嶋神宮の御神水を使用。仕込みのたびに、境内から手で汲んでくるという徹底ぶりです。もちろん、ビールの香りづけに欠かせないコリアンダーやオレンジピールもすべて自家製。
仕込み水は硬度が高く、ミネラルたっぷりの鹿嶋神宮の御神水を使用。仕込みのたびに、境内から手で汲んでくるという徹底ぶりです。もちろん、ビールの香りづけに欠かせないコリアンダーやオレンジピールもすべて自家製。
世界一から学んだ生き生きとしたものづくりを目指して。
「勤め人時代に、世界一の称号をもつ生産者さんを訪ねる旅をしていたんです。みなさんに共通していたのは、原料の生産から製造、販売をすべて一貫して自分たちの手で行なっていたこと。例えばスペインの生ハムの生産者さんは、豚のエサを一から栽培していました。
みなさん仕事に誇りをもっているから、目をキラキラさせながら自らの商品を自慢してくるんです。この生き生きとしたものづくりを[パラダイス・ビア・ファクトリー]も目指しています」。
唐澤さんの“おいしさのためなら、手間は厭わない姿勢と情熱”が実を結び、世界五大ビール審査会のひとつ『インターナショナル・ビアカップ』で2018年に見事銀賞を受賞。その後も評価され続けています。
また、大豆を活かすために唐澤さんの大好物だというジェラート、そしてドーナツの販売も開始。[パラダイス・ビア・ファクトリー]から歩いてすぐの場所に[パラダイス ジェラート&ドーナツ]をオープンさせました。
唐澤さんの“おいしさのためなら、手間は厭わない姿勢と情熱”が実を結び、世界五大ビール審査会のひとつ『インターナショナル・ビアカップ』で2018年に見事銀賞を受賞。その後も評価され続けています。
また、大豆を活かすために唐澤さんの大好物だというジェラート、そしてドーナツの販売も開始。[パラダイス・ビア・ファクトリー]から歩いてすぐの場所に[パラダイス ジェラート&ドーナツ]をオープンさせました。
この世に楽園を。関わる人の人生にパラダイスを。
「ビールやジェラートなどの嗜好品は、人をわくわくさせる力を持っていますよね。自分たちのつくるもので、まるでパラダイスにいるような気分になってもらうのが理想」。店名の[パラダイス・ビア・ファクトリー]には、唐澤さんのこんな想いが込められています。「ビールもジェラートも規模は小さいからこそ、自分の意思で決められるのが一番のメリット。“こうしよう”と思ったらすぐに切り替えて、理想の味を追求できます。トライアンドエラーを繰り返すことで、生産している自分たちだけでなく、まわりの人たちの人生を豊かにしていけるんです」。
「環境への負荷が掛かるような大量生産、大量消費を続けていては、パラダイスではなくなってしまう。持続可能な世界にしていくために、黒を白に変えていくオセロのように自然栽培をどんどんと広げていきたい。それが今の使命です」。”おいしい”を追い求めることが、人生に広がり与え、サステナブルにも繋がることを、唐澤さんは身をもって感じています。