2023/10/11 10:00

日本酒とレモンがつなぐ人と未来。[ナオライ]が目指す、地域活性と伝統技術の継承。

ナオライ
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[ナオライ]が拠点を置く三角島(みかどしま)は、広島県呉市に属する安芸灘諸島のひとつです。瀬戸内地域といえば柑橘の産地として有名ですが、この島はレモンの名産地。なかでも[ナオライ]ではオーガニックレモンの生産者と手を組み、『MIKADO LEMON Sparkling lemon sake』や『琥珀浄酎』といった個性的なお酒を生み出しています。
代表取締役の三宅紘一郎さんは、日本酒の文化を守るために[ナオライ]を創業し、現在では三角島と、そこから海を挟んで真向かいにある大崎下島・久比(くび)にレモンガーデンを構えてレモンの栽培にも取り組むようになりました。レモンと日本酒を使った酒造りが、どのようにして『伝統技術の継承』『地方創生』といった社会課題を解決するのか?そして、商品名にもなっている『浄酎』とは?
三宅さんに話を伺うべく、[ナオライ]の手掛けるレモンガーデンを訪ねました。
「酒蔵の廃業を止めたい」。日本酒と関わりの深い一族に生まれたからこそ抱いた危機感。

「酒蔵の廃業を止めたい」。日本酒と関わりの深い一族に生まれたからこそ抱いた危機感。

呉駅から車を走らせること約1時間。青く美しい瀬戸内海を眺めながらいくつもの島を越え、橋を渡ると、大崎下島・久比にたどり着きます。「昔ながらの家屋がそのまま残っていて素敵でしょう」と、三宅さん。無理に都市開発せず、自然と共存する地域の在り方に惹かれて、ここに拠点を構えたといいます。
三宅さんが酒事業を始めたきっかけは、全国各地の古い日本酒蔵が続々と廃業に追い込まれている、その状況に危機感を抱いたことでした。
「親族に日本酒関係者が多く、幼いころから興味を持っていたんです」と、三宅さん。「何百年も時を重ねてきた酒蔵が消滅してしまうのはとてももったいない。ひとつでも多く酒蔵を残し、多様で豊かな日本酒文化を未来に引き継ぎたいと思ったのです」と、続けます。
豊かな土壌をつくり、生命力たぎるレモンを使用する。「皮まで食べられるフレッシュレモン」。

豊かな土壌をつくり、生命力たぎるレモンを使用する。「皮まで食べられるフレッシュレモン」。

日本酒文化の継承と同時に目指したのが、「地域の特産品を酒造りに取り入れ、一次産業に携わる人を増やしていく」ことでした。そこで着目したのが、瀬戸内海を代表する果実であるレモン。良質なレモンのつくり手を探して呉市内の島々を巡り、出会ったのが、三角島のレモン農園でした。
三宅さんは、ここのレモンの弾けるようなおいしさに感動したそう。「手間暇かけて栽培されたレモンは、安心して皮ごと食べられるうえに、香りが強くて味が濃い。このレモンを使い、心身共に健康になるお酒をつくりたいと思いました。また、規格外で市場に流通しにくい果実を買い取ることで、産業の持続に貢献できるはずだと考えたのです」(三宅さん)。
レモンと日本酒をかけ合わせて生まれた『MIKADO LEMON Sparkling lemon sake』。

レモンと日本酒をかけ合わせて生まれた『MIKADO LEMON Sparkling lemon sake』。

現在、[ナオライ]の代表銘柄のひとつとなっているのが、日本酒とレモンの香りをかけ合わせたスパークリングレモン酒『MIKADO LEMON Sparkling lemon sake』(以下、『MIKADO LEMON』)です。
2015年頃からこの商品の開発を進め、それと並行して三角島の一画を開墾して自社農園でのレモンの栽培を始めました。
2017年、遂に『MIKADO LEMON』が完成。その後、三宅さんは『MIKADO LEMON』を30本販売するごとに1本のレモンの木を植樹するシステムを作り、2021年時点で330本の植樹に成功しました。久比・三角島にオーガニックレモンバレーが広がる未来を夢見ています。レモンを消費するだけではなく生産にも取り組み、久比・三角島の自然と人から感謝される酒造りをしたいと思っています」(三宅さん)。
日本酒の価値を再定義する。[ナオライ]の技術力と信念がつまった『琥珀浄酎』。

日本酒の価値を再定義する。[ナオライ]の技術力と信念がつまった『琥珀浄酎』。

次に三宅さんが着手したのが、全国の酒蔵から日本酒を仕入れることでした。『MIKADO LEMON』の原料になるレモンは[ナオライ]でつくっていますが、三宅さんはさらに、「酒蔵の維持・継承に貢献するために、全国から日本酒を仕入れ新しいお酒をつくろう」と考えたのです。この想いを実現させたのが、独自の『低温浄溜』という技術。
各地の酒蔵で醸す純米酒を40℃以下の低温で『浄溜』し、日本酒由来の豊かな香りと風味を残したまま、水分だけを抜いて長期保存に耐えられる『浄酎』という新たな酒にしたのです。
「『浄溜』『浄酎』は、清酒をさらに清らかにする、という意味を込めた当社の造語です」と、三宅さん。「そして『琥珀浄酎』は、日本酒の華やかな味わいを凝縮し、ミカドレモンの皮を漬け込み、さらに木樽で熟成させてバニラ香をまとわせています」。

伝統産業・日本酒と広島の特産品・レモンの魅力を世界へ発信しながら、未来へつなげる。

なぜ、日本酒を『浄溜』させる必要があるのか?その理由を、三宅さんはこう語ります。
「日本酒はアルコール度数が高くないために、一般的には『新鮮であればあるほど価値が高いお酒』として認識されてきました。また、温度管理も徹底しないといけないので、海外への輸出が難しいお酒です。なんとかして日本酒由来の香りや旨みの素晴らしさを海外に広められないかという思いが、『浄酎』開発へとつながったのです」。
『浄酎』は、ウイスキーなどの蒸留酒と同じく、時間が経つほど味がまろやかになり、深みを増します。そして、日本酒がもつ旨みや香りも楽しめる。「日本酒文化を未来に引き継ぎたい」という三宅さんの想いから始まった[ナオライ]の挑戦は、『浄酎』として結実したのです。
全国の酒蔵と連携し日本酒を仕入れ、そして広島のレモン生産者と手を組みながらつくられる[ナオライ]のお酒は、『地方創生』『伝統技術の継承』といった社会の課題を解決する鍵を握っています。「時間とともに浄酎が熟成して味わいに奥行きが生まれるように、[ナオライ]の描く未来は、焦らずとも、ゆっくりじっくり、やがては必ず実現すると確信しています」と、三宅さんは力を込めて語ってくださいました。
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