『シンレス』とは英語で「罪がない」という意味で、つまり罪悪感がないことを意味します。その言葉を冠につけた 『シンレス ノンシュガー・カフェ』を経営するのは、低糖質菓子研究家であり、栄養士でもある阪本久枝さん。生クリーム、砂糖、バターをたっぷり使うからこそ洋菓子はおいしいとされている世界に、ノンシュガーで低糖質、そしてグルテンフリーで作った絶品の洋菓子で、新しい風を吹かせています。阪本さんが『シンレス』という言葉にかけた強い想いとは。
生まれたきっかけは、身近な人を笑顔にしたいという想い。
シンガポールでダイニングレストランの経営をしていたという、阪本さん。彼女が食べても罪悪感がないスイーツ『シンレス スイーツ』を作り始めたのは、パートナーが糖質制限をしなければならなくなったことがきっかけでした。「食べることが好きな人にとって、食事制限ほどつらいものはないんですよね。あれもだめ、これもだめと制限されて本当に悲しそうで」。
大切な人とまた一緒においしいものを食べたいという願いから、低糖質、かつグルテンフリーのスイーツづくりを独学ではじめます。
「今みたいに糖質なんか注目されていない時代でしたから、本当に大変でした。資料もなかったですし。でも私がやらなきゃ誰がやるんだって気持ちでがむしゃらに試作を重ねました。糖質制限を強いられている人は珍しくないはずなので、成功したらより多くの人を幸せにできるんじゃないかって」。最初に販売したのは、ロールケーキ。自分の店の一角で販売を始めると、実際に食べた方から「元気になれた」と声が届き始め、徐々に評判になっていきます。
「今みたいに糖質なんか注目されていない時代でしたから、本当に大変でした。資料もなかったですし。でも私がやらなきゃ誰がやるんだって気持ちでがむしゃらに試作を重ねました。糖質制限を強いられている人は珍しくないはずなので、成功したらより多くの人を幸せにできるんじゃないかって」。最初に販売したのは、ロールケーキ。自分の店の一角で販売を始めると、実際に食べた方から「元気になれた」と声が届き始め、徐々に評判になっていきます。
『シンレス スイーツ』は人助けの気持ちで作っている。
日本に帰国してからは、「食事制限に悩んでいる人たちをもっと救いたい」という気持ちで、兵庫県にある医療センター内で販売をはじめたそう。「人が集まらないところだったので、売り上げは少なかったんですけど(笑)。これは人助けですよね。おいしいものを食べることってウェルビーイングに直結しますから」。
その後、生まれ育った街である京都にラボを開き、研究を重ねた阪本さん。砂糖のかわりに、発酵食品などに含まれているエリスリトールという糖質を使い、糖質を大幅にオフ。小麦粉ももちろん不使用です。白砂糖を使わないとおいしく仕上げるのは難しいとされているカヌレも、一切砂糖を使わずに成功。「私の作るスイーツが社会貢献の一つになる」と、阪本さんの自信にもつながっていきます。
世界に『シンレス スイーツ』の考えを広めるために、できること。
『シンレス ノンシュガー・カフェ』を開店してからは、実際に食事制限に悩んでいるお客さんが来店してくれることが増え、直接悩みを聞くことが多くなってきたそう。「みなさん『ここのお菓子なら食べられると聞いて』と、藁にもすがるような気持ちで来てくださるんですよね。この方々が家でも『シンレス スイーツ』を作れるようになったらもっと幸せになれるのではと考え、『シンレス メソッド』を伝えるためお菓子教室を始めました」。
お菓子教室では、実際に手を動かす実習だけでなく、食材の選び方を一から教える座学の授業もあります。2017年からは大学の教壇にも立つように。「授業を受け持ったばかりの頃は低糖質という言葉を知っている生徒なんて数名でしたが、今はほぼ100%の子が知っています。低糖質はダイエットだけに有効な考えではなく、我々のウェルビーイングにつながるものなんだと伝えています」。
お客様の体調に寄り添ったスイーツを作りたい。
お店での販売や、お菓子教室、そして大学の授業を通して『シンレス スイーツ』の考えを広める活動を続けている阪本さん。「私だけの力では罪悪感なくスイーツを楽しみたいと考えているすべての人に想いを届けるのは難しいから、このメソッドを採用してくれるカフェや、飲食店をどんどん増やしていくのが今の目標」と語ります。
そして、お客さんの体調に優しく寄り添えるようなスイーツの開発も進めています。「処方箋のように、アレルギーに悩む方にはヴィーガンのスイーツを、そして厳しい食事制限を課せられている方には今よりももっと糖質オフのものを提供できればと。食べてくれた方の暮らしがよりよくなるようなものを作っていきたいです」。おいしいものを食べるという、根源的な喜びを改めて教えてくれる 『シンレス ノンシュガー・カフェ』から今後も目が離せません。